マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。

「とりあえず」は非常に便利な言葉です。ただし、この言葉の裏には部下の成長を阻害するデメリットが多く潜んでいます。この記事では「とりあえず」に代表される曖昧な指示出しの弊害を解説し、正しい指示の出し方と、部下のパフォーマンス向上に直結するマネジメントのコツをお伝えいたします。

「とりあえず」は何が悪いのか?

「とりあえず」という単語は非常に便利です。皆さんも部下との会議や普段のコミュニケーションの中でふと使っていませんか?

「とりあえず、〇〇やっといて」「とりあえず、××部に聞いてみようか」など、思い当たるフシがあるはずです。しかしながら、この「とりあえず」という表現は使い方を誤ると部下の成長を阻害する原因となります。その主たる理由は以下の3つです。

1:最終ゴールが不明

仕事においては「誰が・いつまでに・何をやるか」という最終的なゴールを明確にして進めることが非常に大切です。ゴールが明確になっていればそこに向かって集中できますし、到達するまでのプロセスもブレにくいです。

ところが、「とりあえず、〇〇やっといて」という指示だとどうでしょうか。部下は最終ゴールが見えず、自分が何を達成しなければならないのかがわからなくなります。また、最終ゴールが示されていない中で“とりあえず目の前のことやって”と言われると、自分のやっている仕事の意図や意義がわからず混乱したり、ゴールへの最適解がわからなくなったりします。このような状態で仕事に集中できるはずがありません。

2:経過だけで評価されるという錯覚

「とりあえず」という形で部下に指示する際、上司の中では最終ゴールがイメージできているのかもしれません。しかし、それを伝えずプロセスのみの指示をすると部下は「その作業をやっていれば自分は評価される」という錯覚を起こしてしまいます。

例えば、営業のシーンでは、本来の評価軸は売上や利益などの数字のはずです。しかし、「とりあえず、たくさん商談して」という指示を受けた部下は「商談さえしていれば、成約しなくても自分は評価される」と錯覚してしまう可能性があります。

3:部下の免責要因

上述のとおり「とりあえず」の指示は曖昧さを含みます。部下からすると「曖昧な指示をする上司が悪い。この失敗は上司の指示が良くなかったせいだ」という免責(言い訳)につながり、自分事として捉えられないので、当然ながら成長が遅くなります。

部下との適切なコミュニケーション

部下に高いパフォーマンスを発揮させ、成長を促すためには明確なゴール設定が不可欠です。“明確な”とは上司-部下間で解釈がズレないと定義できます。

例えば、上司から「10kmをとりあえず全力で走ってきて」と言われたとしたら、上司-部下で認識が合うでしょうか? この指示の出し方では認識が合うはずがありません。全力とは具体的に何分で完走できればOKなのか? 10kmを走れるようになればいいのか? それともさらに先があるのか? など、最終的に自分がどのようになることを求められているのかが非常に曖昧です。

「フルマラソンを走れるようになってほしいので、まずは今月中に10kmを60分以内で走れるようになって」というコミュニケーションであれば、具体的に10kmを何分で走る必要があるか明確に認識できますし、あくまで最終的ゴールに到達するためのプロセスの一部であることも理解できます。

ですから、部下に対して「いつまでに、どのような状態になってほしい」のかを明確に伝えることを意識してください。また、今出している指示が最終ゴールなのか、その手前のプロセス領域なのかも明確にしておく必要があります。指示の出し方ひとつで部下のパフォーマンスは全然違うものになります。

使ってもいい「とりあえず」もある

これまで不用意な「とりあえず」は部下のパフォーマンス低下の要因になるとお伝えしてきました。しかしながら「とりあえず」の指示を出してもよいケースが2つあります。

1:最終ゴールの達成が部下にとって難易度が高い場合

部下のスキルや経験が不足して最終ゴール(KGI)の達成がすぐには難しい場合、一旦は手前のKPI(重要業績評価指標)達成に集中させた方がよいでしょう。

営業のケースであれば、配属されたばかりの新人にいきなり「月末までに〇〇円の売上を立てなさい」と指示してもピンとこないはずです。このようなケースでは、「とりあえず今週は〇件の電話をして、△件のアポ獲得に集中してください」と本人がイメージできる指示をする必要があります。この際に気を付けていただきたいのが、あくまで評価されるのは月末の売上であり、手前のアポ取りではないと認識を合わせておくことです。

2:新規事業など上司側もゴール設定の正解がわからない場合

もう一つは新規事業や新しい施策など、上司側も正解がわからないケースです。このような場合は仮でもよいので目標を設定し、期限が来たタイミングで結果を分析し、分析を基に新たなゴール設定をするというサイクルを繰り返すことで正解を探っていく必要があります。

ですから、「とりあえず、今月は〇〇をテーマとして進めてください。分析に必要なので△△と□□のデータは必ず取ってください」という指示の出し方は問題ありません。

部下を成長させるマネジメント

これまで「とりあえず」という曖昧なコミュニケーションの弊害をお伝えし、「いつまでに何を達成する」という明確なゴール設定が必要であることは皆さんもご理解いただけたかと思います。最後に、部下の成長を加速させるマネジメントのコツについてお伝えします。

明確なゴール設定をしても当然ながら必ずしも達成できるとは限りません。上司が求めたことに対して不足が発生したときこそ部下の成長のチャンスです。なぜ、不足(未達)が発生したのかの原因分析と、どうすれば不足を埋められるか(ビハインドを巻き返せるか、同じミスをしなくなるかなど)を部下に考えさせて報告してもらってください。ここで上司が安易にアドバイスすると、部下は自分で考えなくなるので“部下に考えさせる”というのがポイントとなります。

ゴールを明確に設定するもう一つの目的は、その期限が来たときに求められたことが出来たか出来なかったかを明確にすることです。出来ていないことを正しく認識しない限り人は成長しません。

まとめ

部下に明確なゴール設定をするのは上司の責務です。部下が育たない、自責で考えてくれない、上司と考えがズレている、などの問題を抱えている方は上司である皆さんが「とりあえず」と安易に曖昧なゴール設定をしてしまっていないでしょうか。今一度、ご自身のマネジメントを見直してみてください。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

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