
日本人の約8割が「疲れている」と回答するなど、疲労は現代的な“国民病”と言われます。仕事や人間関係のストレス、運動や睡眠の不足、スマートフォンへの依存など、様々な原因が指摘されますが、医学的に間違った「食事のあり方」を問題視するのが牧田善二医師です。新著『疲れない体をつくるための最高の食事術』が話題の牧田医師が解説します。
解説 牧田善二(まきたぜんじ)さん(糖尿病・アンチエイジング専門医)

具をたっぷり。炭水化物だけを避ける
米飯やパン、麺類などの炭水化物を食べるときは、「単体」にしない心掛けも大事です。
炭水化物だけだと、どんどんブドウ糖に分解され血糖値がみるみる上がります。しかし、そこにタンパク質や脂質が加われば、その消化に時間がかかり、血糖値の上昇が緩やかになるからです。
こうした研究は世界中で行われていますが、なかでも非常に興味深いものを紹介しましょう。『European Journal of Clinical Nutrition』に論文が掲載された研究では、健常者を対象に、「パンだけを食べた場合」「バターと一緒にパンを食べた場合」「オリーブオイルと一緒にパンを食べた場合」「コーンオイルと一緒にパンを食べた場合」の4つのパターンについて、血糖値の変化を調べています。
下のグラフ(図10)を見てもらえば一目瞭然、「パンだけ」の血糖値が急激に上がっているのがわかるでしょう。

カロリーで考えれば、パンだけのケースが一番低くなります。
ところが、脂質を分解するという手間が入らない分、血糖値が上がりやすく太りやすいのです。
食パンブームは幾度もあり、数年前にも高級食パンブームが起きました。まずは「そのまま食べるのが一番」という売り文句をずいぶん耳にしました。
しかし、パンを食べるなら、バターをたっぷり塗ったり、オリーブオイルに浸して食べたりするのが健康上は正解です。
あるいは、卵や野菜など、具をたっぷり挟んだサンドイッチもいいですね。ただし、ハムやベーコンなどの加工肉は添加物が多いので、あまり食べないほうが無難です。
できるだけ脂質やタンパク質と一緒に
米飯も同様です。
明太子や佃煮など少量の「ご飯のお友」で食べるより、五目チャーハンにしたほうがいいのです。
肉や卵のタンパク質、炒めるための脂質によって、米飯の糖質の分解・吸収が遅れるからです。
おそば屋さんに入ったときには、かけそばや素うどんではなく、山菜そばや月見そばなど、少しでも具の多いものを頼みましょう。
繰り返しになりますが、みなさんの血糖値を乱高下させ、みなさんを疲れさせ、みなさんを太らせるのは、カロリーの高いものではなく、糖質が多いものです。
しかも、その分解・吸収が早いほど悪い作用が起きます。
大事なのは、糖質を単独で活動させないこと。
単独で暴れ回ることがないよう、できるだけ、脂質やタンパク質というお目付役と一緒に食べましょう。
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世界最新の医学的データと20年の臨床経験から考案『疲れない体をつくる最高の食事術』
現代人の疲れは過労やストレスではなく、「食」にこそ大きな原因がある。誤った知識に基づく食事は慢性疲労ばかりか、肥満や老化、病気をも呼び込む。健康長寿にも繋がる「ミラクルフード」の数々を、最新医学データや臨床経験を交えながら、具体的かつ平易に解説している。

牧田善二/著 四六判208ページ 小学館刊 1650円(税込)
