
マーケティングには欠かせない「仮説検証」という言葉をご存じでしょうか? マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」で、「仮説検証」についての知見を得ましょう。
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変化が激しくなっている現代社会のビジネスシーンでは、精度の高い仮説検証が求められています。仮説検証は新規事業立案や製品開発など、マーケティングに欠かせない手法です。精度の高い仮説検証を実施できれば、スピーディーに事業を成長させることもできるでしょう。
本記事では、仮説検証の考え方や手順について解説していきます。マーケティングや新規事業の担当者の方におすすめの内容です。ぜひ最後まで読んでみてください。
仮説検証とは何か
仮説検証とは、収集したデータを元に仮説を立てて、真偽を検証することです。ビジネスシーンでは、新規事業や市場分析の際に仮説検証が実施されます。
例えば、「新型コロナ禍でリモートワークが増えた」という仮説があるとしましょう。その際に、アンケートで企業の現状をリサーチすることで、その仮説が合っているかどうかを検証します。仮説検証で、仮説が合っているかどうかを確認できれば、より確実な事業開発ができるようになるでしょう。
仮説検証の最大の目的
仮説検証の目的としては、以下が挙げられます。
・有効性の確認
・市場分析
・営業商談
仮説を立てずに成功するまで数をこなす戦術は、時間を無駄にする可能性があります。あらかじめ仮説を立てた上で、それを繰り返し検証しながら業務を進めることで、最短距離で事業を成長させられるでしょう。
マーケティングで最も重視されるのは「顧客が求めているものを提供すること」に他なりません。これは、顧客自身が気づいていない潜在ニーズも含まれます。
潜在ニーズに合致した商品を開発するには、仮説検証が欠かせません。仮説検証によって可能となる有効性の確認も市場分析も、いずれもマーケティングの領域であり、仮説検証の最大目的は、顧客満足度の最大化と言えます。
仮説検証とデザイン思考の違い
仮説検証に似た言葉として、デザイン思考も挙げられます。
デザイン思考とは、ユーザーの視点に立って物事を考え、解決策を導き出す手法のことです。ユーザーのニーズや悩みを理解するところからスタートし、アイデア制作、効果検証を通じて、課題解決に取り組みます。
仮説検証もデザイン思考も、どちらも「課題解決や新しいアイデアを作り出す」という点では同じです。一方で、そこに至るまでのプロセスが異なります。
仮説検証は「データ」をはじめとする客観的な指標を重視するのに対して、デザイン思考は「ユーザーの悩み」などの人間的で主観的な要素を重視します。
仮説検証がビジネスに必要な理由
仮説検証がビジネスに必要な理由は、以下の2つです。
・スピードを上げるため
・分析精度を高めるため
どちらも、変化が激しくなっている現代社会において重要な要素だと言えます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
理由1:スピードを上げるため
仮説検証がビジネスに必要な理由として、スピードを上げることが挙げられます。変化が激しい現代社会では、意思決定の速度が、ビジネスが成功するかどうかの鍵を握ります。そして、意思決定の速度を上げるためには、責任者が常に仮説を持って事業に取り組む必要があります。
スペースX CEOのイーロン・マスクは「人口爆発中の地球を救うためには火星移住とエネルギーのクリーン化が必要」だとする仮説を立てて、それを基に重大な意思決定をこなす日々を送っています。
あらかじめ仮説を持っておけば、その仮説を実現するために最短距離になるであろう意思決定が可能になるでしょう。
理由2:分析精度を高めるため
仮説検証がビジネスに必要な理由として、分析精度を高めることが挙げられます。
仮説検証を効果的に進めるために大切なのは、何度もテストを繰り返すこと。プロトタイプを制作しながら、仮説に近づけるかどうかを検証することで、精度を高めていくのです。この方法であれば、分析精度を高めながら、スピード感を上げることができます。また、途中で社会に大きな変化が訪れても、軌道修正しやすいのもメリットです。
仮説検証の経験値が得られるにつれて、必要な情報のみを集められるようになるため、より効率的に仮説検証できるようになるでしょう。
仮説検証の手順・流れ
仮説検証を実施する際の手順は以下の通りです。
1.課題を洗い出す
2.仮説を設定する
3.客観的なデータを収集する
4.検証で仮説を改善する
5.検証結果を社内で利用する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
手順1:課題を洗い出す
まずは現状の課題を洗い出します。問題解決や新しいアイデアを生み出すためには、客観的な視点で現状を理解する必要があります。どのような問題が起こっていて、何が足りていないのかをしっかり分析しましょう。
例えば、ある企業が「チームの生産性が向上しない」という問題を抱えているとしたら、なぜ生産性が向上しないかをさまざまな視点で分析します。
仮説を立てるにしても、まずは課題やニーズがなければ、何も生み出すことができません。課題を洗い出す際は、責任者や仮説検証のチームだけでなく、現場や外部の意見を取り入れることも重要です。
手順2:仮説を設定する
現状の課題を洗い出したら、仮説を設定しましょう。
先ほどの例を持ち越して「チームの生産性が向上しない」という問題があるとします。そして、どうやらその理由はオフィス環境にあるようです。これであれば「オフィス環境を改善すればチームの生産性が上がるのでは?」という仮説を立てることができます。
もちろん、ほかにも「リモートワークの導入」や「使用機材の変更」など、1つの課題解決に対してさまざまな仮説を立てることが可能です。
ただし、ここから効果的に仮説検証を進めるために、客観的なデータで検証できる仮説を厳選しておくようにしましょう。
手順3:客観的なデータを収集する
仮説を設定したら、客観的なデータを収集します。
例えば、チームの生産性であれば、生産性に関するレポートや論文を集めていきます。特に「オフィス環境と生産性の関係」などのテーマは、世界中でレポートが発表されています。日本国内だけでなく、海外の論文の利用も検討しましょう。
また、自らが市場分析を実施する方法も考えられます。適切なターゲットを設定して、アンケートを実施すれば、課題解決に特化したオリジナルレポートの作成が可能です。現在はインターネット上でデータ収集が可能なので、短期間で済ませてしまいましょう。
手順4:検証で仮説を改善する
客観的なデータを収集したら、仮説を検証していきます。検証方法は、主に2つあります。
1つめは、客観的なデータに基づいて検証する方法です。例えば、非常に良質な論文で「オフィスと生産性に相関関係がある」ということがわかれば、少なくともデータ上は仮説が正しいことになります。
2つめは、実際に現場で検証する方法です。データが本当に現場でも適応されるのかを、自分たちでテストしていきます。
例えば、「スタンディングの方が生産性が上がる」というデータがあるとしたら、実際にスタンディングデスクを導入して、仮説を検証するのです。この時に仮説が間違っていることがわかったら、その都度で仮説を変更して、効果検証を続けていきます。
手順5:検証結果を社内で利用する
検証結果が出たら、それを部署や社内に共有し、自分たちの仮説が間違っていないかを確認してもらうようにしましょう。そして、可能であれば、有効性が証明された仮説を実際に取り入れるのがベストです。
スタンディングデスクの導入で生産性が向上するのであれば、段階的にオフィスに導入していきます。ただし、実際に仮説を現場で導入する際は、ROI(投資収益率)を算出する必要があるでしょう。
例えば、スタンディングデスクの導入よりもリモートワークの導入の方が、ROIが効果的なのであれば、後者を選んだほうがいいでしょう。
このように、仮説検証は何度もフィードバックを実施し、多様な意見を取り入れながら改善策を育てることが大切です。
仮説検証におすすめのフレームワーク
仮説検証におすすめのフレームワークは以下の3つです。
・MVPキャンバス
・ストーリーボード
・アブダクション
それぞれ詳しく解説していきます。
フレームワーク1:MVPキャンバス
MVPは「Minimum Viable Product」の略で「必要最低限の機能」という意味になります。そして、MVPキャンバスとは、仮説検証のために最小限の機能を備えた商品やサービスを開発する手法のことです。
例えば、現在ソフトウェア業界で一般的となっている「β版」は、MVPキャンバスの典型例です。必要最低限の機能を備えた状態で市場に投下することで、ユーザーからフィードバックを収集します。つまり、必要最低限の商品でテストマーケティングを実施するのがMVPキャンバスの目的です。
この方法であれば、コストを抑えながらも最短距離でユーザーファーストの製品を開発できます。
フレームワーク2:ストーリーボード
ストーリーボードは、商品やアイデアをストーリー仕立てで視覚的に表現する手法のことです。
ストーリーボードは「絵コンテ」とも呼ばれ、本来は映像作品の制作で用いられていたものでしたが、現在はビジネスシーンでも利用されています。ストーリーボードを使えば、どんな顧客がどのような方法で製品を入手し、その製品でどのような体験が得られるかが、直感的に理解できるようになります。つまり、ユーザー目線での製品体験を可視化したものがストーリーボードということです。
ストーリーボードを活用すれば、製品開発だけでなく、マーケティング戦略もユーザー目線で仮説検証できるのがメリットです。文章で伝わりづらい仮説検証を実施したい場合は、ストーリーボードを利用するのがいいでしょう。
フレームワーク3:アブダクション
アブダクションは結果から遡って原因を推測する思考法のことを指します。ビジネスシーンでは、先に目標を定め、そこから逆算して行動計画を作成するのが一般的です。それと同じくアブダクションも、先に結果があり、そこから逆算することで仮説検証を実施していきます。
例えば、なぜスターバックスのフラペチーノは若者に人気があるのでしょうか? この「フラペチーノは若者に人気」という事実に対して、なぜ人気になったのかを逆算で考えていくのがアブダクションです。実際に考えていくと、「SNS受けしやすい見た目」や「高糖質・高脂質」などの原因が考えられ、そこから「写真映えする高糖質商品はInstagramで売れる」という仮説が導かれます。
このように、事実から逆算して新たに仮説を作り出すのがアブダクションです。
仮説検証を行う際の注意点
仮説検証を行う際の注意点としては、以下の3つが挙げられます。
注意点1:情報を収集しすぎない
仮説検証を行う際の注意点として、情報収集しすぎないことが挙げられます。仮説検証は、客観的なデータを用いて仮説の真偽をチェックする手法です。客観的なデータは仮説検証において重要なので、データをたくさん集めたほうがいいように感じます。しかし、集めたデータ全てが仮説検証に役立つわけではありません。
同じ内容の論文でも、被験者の数や引用数によって質は異なります。質が低いデータを集めても、仮説検証には役立たないのです。仮説検証で求められる資料は、量ではなく質です。
良質な情報に絞って情報収集することで、最短距離で仮説検証を進められるようになるでしょう。
注意点2:失敗を恐れない
仮説検証を行う際は、失敗を恐れないようにしてください。そもそも、1回目に打ち立てた仮説がそのまま用いられることはほとんどありません。大抵の場合、仮説が正しくなかったり、より良い仮説が導き出されたりするものです。
仮説は、あくまでも真偽がハッキリしない「仮説」に過ぎないので、必ず失敗が付いて回ります。であれば、失敗する前提でスピーディに仮説検証を繰り返し、何度もアップデートした方が効率的だと言えるでしょう。そのため、担当者が失敗を恐れないのはもちろんのこと、チーム全体で失敗を許容する雰囲気を作っていくことが求められます。
「失敗しても大丈夫」という意識改革から始めるといいかもしれません。
注意点3:バイアスを排除する
仮説検証を実施する際は、思い込みや主観的な目線を排除し、客観的なデータを用いて、仮説の真偽を確かめるようにしましょう。
仮説検証は、その仮説の真偽を見極めるために、客観的なデータを用いる必要があります。しかし、実際の判断を人間が担当する以上、主観的な意見や思い込みが介入してしまう可能性も考えられます。
例えば「おしゃれなオフィスの方が生産性が上がる!」という思い込みを持つ人が、この思い込みに有利なデータを多く集めてしまうかもしれません。
仮説検証を実施する際は、外部の意見を取り入れることが重要です。チーム外の人材や、場合によっては業界とは全く関係ない人物まで、客観的な視点を取り入れるようにしましょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
・仮説検証は、収集したデータを基に仮説を立てて真偽を検証すること
・仮説検証の最大の目的は顧客満足度の最大化
・仮説検証は事業の成長スピードを早くするのに有効
・仮説検証を実施する際は主観的な意見やバイアスを排除するのが大切
現代社会は変化が激しいため、精度の高い仮説検証を定期的に実施する必要があります。ぜひ、ビジネスに仮説検証を取り入れて、激動の時代を乗り切りましょう。
【この記事を書いた人】
識学総研 編集部/株式会社識学編集部です。『「マネジメント」を身近に。』をコンセプトに、マネジメント業務の助けになる記事を制作中。3,000社以上に導入された識学メソッドも公開中です。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/
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